
仕事のがとても忙しい時期、ちょっとしたことで家族にイライラしてしまうーーー
そんなとき、心の中ではいったい何が起きているのでしょう?
今回は、「仕事と家庭のストレスがつながっている」という、身近だけどに落とされがちなテーマについてお話しします。
仕事と家庭は「別もの」ではない?

「忙しすぎて、家に帰っても余裕がないーーー」
「パートナーとすれ違ってばかりーーー」
「子供にイライラしてしまって、あとで自己嫌悪ーーー」
そんな風に感じたことはありませんか?
私たちが仕事で感じるストレスやプレッシャーは、気づかないうちに家庭にも影響を及ぼしていることがあります。
このように、仕事と私生活の間で感情や影響が波及することを「スピルオーバー」と呼びます。
スピルオーバーとは?
スピルオーバー(spillover)とは、ある領域での経験や感情が、別の領域にまで影響を及ぼすことを意味します。
スピルオーバーには、ネガティブなものとポジティブなものがあります。
ネガティブ・スピルオーバーの例
- 仕事の忙しさで家族との時間が減り、関係がぎくしゃくする
- 家事や育児に追われて疲れ切り、仕事のやる気が出ない
ポジティブ・スピルオーバーの例
- 仕事で培ったスキルを家庭生活でも活かすことができる
- 週末にリフレッシュできたことで、仕事に前向きに取り組める
つまり、仕事と家庭は「別々の世界」ではなく、互いに影響し合う関係にあるのです。
研究では、ネガティブなスピルオーバーが増えると、抑うつや不安感、バーンアウト(燃え尽き症候群)などにつながる可能性があることも指摘されています。
ストレスはパートナーにも伝わる
スピルオーバーは「自分の中だけ」で起こる現象にとどまりません。
たとえば、夫のストレスが妻に、妻のストレスが夫に伝わることがあります。
このように、一方の感情や状態がもう一方にも影響する現象を「クロスオーバー」と呼びます。
ある研究では、仕事のストレスが高いと夫婦間の関係が悪化し、それがパートナーの心身の健康まで影響を及ぼすことが示されています。
たとえば、仕事の負担が大きくなると、帰宅しても気持ちが休まらず、家族との会話が減る。
すると、関係がぎくしゃくし、結果として家族全体のストレスが高まるーーー
そんな悪循環が起こることもあるのです。
ネガティブなスピルオーバーに気づいたら
- 「最近、家庭でもうまくいかない」
- 「仕事のやる気がでない」
そう感じた時は、もしかするとスピルオーバーが起きているサインかもしれません。
まずは立ち止まって、
「今、自分はどんな影響を受けているのか?」
を見つめ直してみましょう。
以下の方法が、少しでも助けになるかもしれません。
1.原因に向き合い、対処する
対処可能な原因がある場合は、それに取り組むことが最も効果的です。
例えば、仕事の負担が大きいなら、上司に相談する、家庭での役割分担を見直すといったことが有効です。
できる範囲で工夫し、難しいときは周囲に助けを求めてみましょう。
2.気分転換を取り入れる
原因がすぐには解決できないこともあります。
そうした場合は、「今を乗り切る工夫」が大切です。
小さな楽しみや達成感を感じられることに取り組むだけでも、気分がリセットされやすくなります。
3.十分な休息をとる
心身が疲れていると、ストレスの影響をより強く受けやすくなります。
少しでも睡眠時間を確保する、日中に短い休息を挟む、スケジュールに「休み」と記入して休日を確保するなど、休むことを意識的に取り入れることが大切です。
4.誰かに相談する
「なんとなくうまくいかないけど、原因がよくわからない」
そんなときは、信頼できる人に話を聞いてもらいましょう。
話すことで思考が整理され、新しい視点が得られることもあります。
身近な人でも、専門のカウンセラーでも構いません。
ポジティブなスピルオーバーを育てる
スピルオーバーは、悪い影響ばかりではありません。
良い影響(ポジティブ・スピルオーバー)を増やしていくこともできるのです。
たとえば、
- 週末は好きな事に思いきり打ち込むことで、仕事へのエネルギーが生まれる
- 仕事で身につけたマネジメントスキルを活かして、家庭のタスクを整理する
こうした工夫によって、仕事と家庭の両方に良い循環を生み出すことができます。
バランスを見直すタイミングかもしれません
仕事と家庭は切り離せないものだからこそ、どちらも大切にできるバランスを見つけることが重要です。
もし「ちょっとしんどいな」
と感じたら、そのときが見直しのチャンスかもしれません。
私たちは、あなたが自分らしい仕事と私生活のバランスを取り戻し、心地よい毎日を過ごすサポートをしています。
<参考・引用文献>
島津明人(2014)「ワーク・ライフ・バランスとメンタルヘルスー共働き夫婦に焦点を当てて」日本労働研究雑誌
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